武満徹氏「すべての人が芸術家になるべきだ」

「すべての人が、芸術家になるべきだ」
という主旨は、武満徹氏が、「文化の現在」
という叢書に書いた主旨だそうです。

武満氏は、1985年の高橋悠治氏との対談で、
下記のように、この主旨を語っています。
(この対談は、「へるめす」という書籍に、
掲載されたそうです)

「今の芸術家の役割というものは、
本当に生活している人間全部が、芸術家的な創造者に
なり得る時代までの、かりそめの、ある一つの役割なのだ。
ある意味で、我々を非常に、縛ってきた因習というか、
特権的な美というものが、失われて、
理想主義的な言い方かも、しれませんけど、
生活者すべてが、本当の芸術家になる時代が、
くるまでのもので、芸術家なんていう存在が、
なくなれば、一番良いわけですね」

私のような、いいかげんな者が、
「武満氏の主旨を、よく理解しているか?」は、
自信がないですが、高橋悠治氏は、
素人の音楽家と共に、水牛楽団という
音楽的な試みをやって、楽団員は、
あえて、名が売れる事は回避して、
匿名性があるそうです。

芸術家として、専門家として、認められて、
ビジネスとして、芸術で食べられて、
世間に名が売れる事とは、真逆の高橋氏の
音楽の本質を追求する活動ですね。

武満氏は、この匿名性が必要な、素人集団の音楽活動を、
「一部の専門家の特権に、よりかかった音楽活動ではない、
音楽の本質的な活動」として、推奨しています。

大友良英氏の、知的障がい者と、即興演奏家による、
「音遊びの会」も、参加者には、専門性も、
仕事のための業界の知名度をあげる事も、
求めていないです。

乱暴に考えると、高橋氏も、大友氏も、
「専門家では、枠にはまって、できない音楽。
今までにない、より自由な、人間の生きる事に、
より深くかかわれる音楽」を求めて、
素人と音楽活動をしているわけですね。

話は、武満氏の主旨とは、少しそれますが、
著名な作曲家の著作に、
「アマチュアの音楽家のレベルが、
どんどん上がり、プロとアマチュアの境が、
なくなった。音楽を仕事にできるプロは、
今後、どんどん減少していくだろう」
と、嘆いている文が、ありました。

専門性が高く、昔なら、音楽で食べられる人も、
音楽以外の仕事について、音楽専業は、どんどん減り、
兼業が増えています。

兼業でも、あえて、匿名(例えば、ライブや、ネットの
動画でも、覆面で演奏する)にして、規制の枠にしばられ
ないで、自由に音楽をやりたい(自由にアートをしたい)
という人も、出てくると思います。

しかし、そうなると、専門性とは、なんだろう?
という事になります。

個人的な狭い範囲で、専門性を考えてみると、
ジャズの場合は、専門性の高いクラシックの要素を、
黒人の民族音楽に加えて、ジャズという音楽が、
できたわけです。

50年代~60年代には、このジャズが、世界中のファンを獲得して、
ワールドクラスの、メジャーな音楽ジャンルになりました。

その後、モダンジャズから、コンテンポラリージャズの
流れになり、モダンジャズは調性(ハ長調やイ短調etc)
は、1曲のなかで、せいぜい2つぐらいなのに、
多調(1曲の中に、複数の調が存在する)の方向になり、
モードジャズも、ポリモーダル(一つのモードではなく、
複数のモードを1曲に詰め込む)方向に変わりました。

リズムも、ポリリズムと言って、1曲のなかに、複数の
リズムを詰め込む。

結局、50年代・60年代に流行ったモダンジャズから、
どんどん複数の要素を、1曲につめこんで、
難解で、より専門性が高い、複雑な要素の音楽になったのです。

専門性が、どんどん高くなると、当然、音楽的な知識も、
どんどん難解になり、コンテンポラリージャズ理論は、
一見すると、数学の教科書のような難解なものになりました。

しかし、この難解路線を、どんどん進めていくと、
人間の生から遠い、人工的な音楽の方向になりがちな面
も出てきて、フリージャズ(理論の枠を、はずして、
なにをやっても良い)という方向になりました。

大友良英氏は、難解な前衛ジャズを経験して、
知的障がい者との音遊びの会で、より枠にはめない、
自由な音楽を、創造しているわけですね。

この流れは、西洋音楽のテクニックや、難易度の
レベル(専門性のレベル)が、どんどん上がり、
人工的で、どこか本能的な生命力の弱い音楽に
なる弊害が出てきたときに、本能の音楽である
土着の民族音楽を、研究する専門家が、多くなった
事とも似ている、流れだと思います。

フリージャズは、鍵盤を、拳骨で叩いても良いし、
演奏をやめて、踊りだしても良い。
「馬鹿野郎!」と、突然叫んでも良いわけです。

クラシック音楽も、ジョン・ケージ氏が、
コンサートで、楽器を演奏せず、炊飯器で、ご飯を
炊いたり、まったく演奏しない、前衛コンサートを
模索したのも、同じ流れだと思います。

その後、高橋氏や、大友氏のような、あえて、素人
との音楽活動で、枠をはずして、より自由な音楽を
模索する活動も、出てきたわけです。

専門性というものは、既存の知識や技術で、
がんじがらめになり、新しい発想が、生まれない
弊害も出てきたことからの、素人との活動だと
思います。

あと、大友氏が、知的障がい児との「音遊びの会」で、
「自分も、相当、自由に音楽を、やってきたつもりだけど、
これほど、自由な連中は、初めてだった。
相当、覚悟してやらないと」というようなことを、
新聞で、語っていて、知的障がい児は、論理的な思考
は苦手なので、それを補うように、直観力が、
相当発達していて、現代人に、欠けがちな、
本能の直観で、音楽をやることに、
大友氏は、惹かれたのだと、私は思います。

と、ここまで書いて、私は、幼児とのレッスンを、
夢想してしまいました。

以下は、私が夢想した、現実にはないお話です。

A子ちゃん
「ねえ、先生、ちょうちょうには、指がないから、
 ピアノ弾けないよね。
 ピアノさんとは、お友達には、なれないの?」


「ちょうちょうは、お花とお話できるから、
ピアノは弾けなくても、ピアノさんと、
音楽でお話できるのよ。
ちょうちょうは、ピアノさんの周りを、
ひらひら飛び回って、お花とお話するように、
ピアノさんと一緒に、歌をうたえば良いのだよ。

ちょうちょうは、ダンスを踊って、お話して、
唄を歌う。ピアノさんも、一緒に、心の中で、
歌をうたえば、音楽になるでしょう」

A子ちゃん
「でも、ちょうちょうは、本当は、指が欲しいよね。
ピアノ弾きたいよね」


「どうかなあ??ちょうちょうには、できて、
ピアノさんには、できないことも、
たくさんあるでしょう。
ピアノさんは、外に出かけられないし、
空も飛べないんだよ。お花とも、お話できない」

A子ちゃん
「ねえ、先生、ピアノさんが、どんどん小さくなって、
ちょうちょうの背中に、のせられて、
空を飛んだり、お花を見たり、外で、
たくさん遊べたら、ピアノさんも嬉しいよね」


「そうだね。夢の国なら、なんでもできるから、
ピアノさんは、ちょうちょうの背中に
のせてもらって、外に飛んでいって、
お花や虫や、草や、木や、いろいろなものと、
お話して、一緒に唄をうたって・・。
あのねえ、音楽は、指がなくても、
楽器ができなくても、誰でも、できるんだよ。
指がなかったら、歌をうたえば良い。
唄が歌えなかったら、心のなかで、歌えば良い。
心と心が、つながることで、なかよしになれれば、
ピアノさんも、ちょうちょうも、一番嬉しいんだよね」

最後に、大友氏は、「即興集団に垣根なし」
というタイトルの新聞記事で、
音遊びの会の代表を務める、飯山ゆいさんが
「普段は、接することのなかった、相手を前に、
どうやって、コミュニケーションを取るのか?
はたまた、音楽とは何か?etc・・。
さまざまな問いを胸に、共感、実験、遊び、
そして、共に多くの食事と対話の時間を、
重ねる事で、音遊びの会は、いつしか、
参加者にとって、かけがえのない場になりました」
と、書いたことを、紹介しています。

大友氏は、テレビ番組で、
「大部分の人は、階段を上がれるでしょう?
でも、中には、上がれない人も、少数はいて、
上がれない人は、どうすれば良いかと、
一緒に考えるのが、豊かさだと思う。
まあ、音遊びの会は、豊かすぎるけど・・。
豊かすぎるのは、大変なんだけど、
でも、この豊かすぎる状態を、日本の人は、
味わった方が良い」、と、語ったそうです。

私は、大友氏の言われる、豊かというのは、
心の豊かだと思います。

確かに、こういう、心の豊かは、食うや食わずの、
極限状態では、難しいかもしれないですが、
でも、私は、「ちょうちょう君は、指がなくて、
ピアノが弾けなくて、かわいそうだね」
と言うのは、大嫌いです。

子供たちも、友達のいろいろな個別性を認めて、
みんなで、心を通わせる事が、豊かな事なのだと
思ったのです。

一部の専門家、仕事で成功して、著名人になった
人だけが、芸術家とか、アートする人と、認められる
時代から、すべての人がアートするようになる時代に、
変わっていって、すべての人に、
アートで、豊かな心が、育っていく時代になれば、
良いなあと、思いました。
(現実は、厳しいですけどね。哀)

故人になられた武満氏も、すべての人が、芸術家になることで、
人の心が豊かになることを、天国で、望んでおられると思います。

武満徹さん、大好き!!
武満さんは、きっと、公園で、幼児が、ちょうちょうを
追いかけているのを見ても、アートを感じる方だと
思います。

あさげピアノハウス

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