受験ピアノの想い出

前日のブログを書いていて、
「受験ピアノって、なんなのだろう?」
と思いました。

狭い私の個人的な経験ですが、つらつらと
受験ピアノの想い出を、書いてみます。

私は、手が小さくて、音大には行っていないので、
受験ピアノは、ヤマハの検定試験の想い出しか、
ありません。

演奏グレードの検定試験は、75点が合格ラインで、
指導していただいた先生の話では、
「試験官との相性によって、音楽的解釈が違っていて、
73点~74点くらいで、不合格になる事もある。
その場合は、解釈が合う試験官に当たれば、
合格する可能性が高い」
とのお話でした。

これは、音大の試験でもある事だそうで、
試験官の先生の解釈に合わせて、演奏をかえるそうです。

音楽とは違う、小説家の話ですが、西村京太郎氏は、
新人の頃、賞をねらって、審査員の作風を研究し、
審査員が好む作品を創作して、見事、入賞したそうです。

スポーツと違って、音楽や文学は、勝敗がはっきりせず、
コンクールも、同じ参加者でも、審査員の解釈によって、
点数が違ってくるので、複数の審査員の総合点で、
公正な審査をするように、なっています。

ヤマハの検定試験の場合も、試験官は2名で採点します。
ただ、2名の試験官が、採点をめぐって、
激論になるとマズイので、相手の試験官に合わせて、
中間点をさぐる所も、あると思います。

受験勉強で得た知識が、一生、残っている人も、多いと思いますが、
私の場合は、試験の時だけ覚えて、すぐ忘れる。
自分の興味のある事しか、覚えていないタイプです。哀。

受験ピアノは、なるべく、自分の指の欠点が出ない、
合格しやすい曲を選び、好きな曲ではないので、
合格すると、どんな曲なのか、忘れました。

受験ピアノの話とは、それますが、私は暗譜も苦手で、
発表会の時、よく暗譜がとんで、適当にごまかして、
弾いてました。
こんな私なので、ごまかしがきかない、みんなが知ってる
曲を、発表会で弾くのは、避けたいタイプでした。

何ケ月も、同じ曲ばかり、練習していると、ウツになってきて、
つらいタイプなので、いろいろな曲を、遊びで弾いたり、
楽譜とは、違う事を弾いて、編曲したりしていました。

落語家の明石家さんま氏は、フリートークが得意な人ですが、
古典落語を学んでいて、最初の高座で、台本がとんで、
やぶれかぶれで、めちゃくちゃに、しゃべりまくったそうです。
結局、明石家氏は、古典落語には、向かなかったのですね。

私も、クラシックの演奏は、向かないタイプですが、
ヤマハの検定試験には、その場の作曲や、その場で、
編曲の課題もあって、とくに苦労せずに、
すぐできたので、先生の指導は、
主に演奏の指導ばかりでした。

何回かブログで、書きましたが、知人のジャズピアニストは、
音大時代に、試験で、あつくなりすぎて、冒頭のアルペジオで、
かけあがる所を、楽譜を無視して、かけあがり過ぎてしまい
ました。

試験官の先生は、珍事に、笑いころげ、
「しまった」と思った知人は、
「すいません。もう1回弾いて良いですか?」
ときくと、先生に激怒されたそうです。
もちろん、不合格です。

生徒さんの受験ピアノの指導では、
幼稚園教諭や、保母さんの学校を、
受験する生徒さんを、教えた事がありますが、
「先生、音楽の試験は、ばっちりだったけど、
学科の試験で落ちました。1年、浪人して、
学科の勉強に頑張りますので、ピアノレッスンは、
1年間、お休みします」
との事でした。

私は、「音楽ができても、合格には、寄与しないのね。
結局、基本は、学校の勉強を、しっかりやるしか
ないのよね」と、思いました。

公立の幼稚園教諭を、目ざす生徒さんも、教えましたが、
一次の学科の試験で、落ちてしまい、
2次のピアノの試験を、受けられない事も多いです。

学科の試験問題集を、見せてもらいましたが、
私には、ちんぷんかんぷんで、かなり難しいです。哀。

幼稚園教諭の場合、公立と私立勤務がありますが、
私立幼稚園は、経営が良い幼稚園は、ずっと、
勤められますが、経営が悪いと、3年目ぐらいで、
給与が安い、新人の教諭にかえられてしまって、
退職になる事もあります。

退職後は、保母さんで働く事が多いですが、
経営が良い幼稚園は、採用試験に、ピアノの初見演奏を、
課すそうです。

結局、「高度な難曲を1年間、練習して弾けても、
初見力(その場で、楽譜を見て、すぐ弾ける能力)
がないと、現場では、使いものにならない」という、
幼稚園側の要望だそうです。

たとえば、同じショパンの曲でも、1年間練習して、
やっと弾けた人と、初見で弾ける人では、
実力は雲泥の差なのですよね。

ヤマハの演奏グレードの検定試験でも、
初見演奏は課せられていて、初見力がないと、
不合格です。

その場の作曲や編曲も、
「膨大な時間をかけて、練習してできた」
というような学びは、役にたたない課題です。

乱暴な解釈では、就職の採用試験で、
「一年間、頑張って、シェークスピアの作品を、
暗唱できます」というのは、企業は求めていなくて、
「その場で、顧客と、気の利いた英会話で、
上手く、仕事ができたり、仕事につかえる英文が、
書ける能力」を、求めているのですよね。

また、正直にいうと、仕事の採用試験ではない、
幼稚園や、保母さんを養成する学校の
音楽やピアノの試験は、一夜漬けも、
よくやりました。

短大や、専門学校は、4年制の大学と比べると、
詰め込みで、試験勉強も忙しく、
ピアノや音楽だけに、時間をさいていられない。

他の試験課題で、一生懸命勉強しているうちに、
レッスンで、教わった事が、とんでしまうのは、
よくある事で、試験の3日前や、2日目の特訓が、
点数を上げる効果があるのです。

楽典の試験の時は、2日前で、合計8時間
レッスンをして、生徒さんは、
「とれる人が少ない、優がとれました」
と、嬉しそうでした。
でも、試験が終わると、ほとんど忘れていますデス。哀。

「優がとれたから、試験に関係なく、楽典の勉強を、
続けていきたいです。先生、楽典を勉強するのは、
面白いですね」と、言われた生徒さんは、一人もいません。

このへんが、受験ピアノの限界かもしれないです。

あたり前ですが、
「##を勉強して、資格をとると、収入が3割増えた」
という事なら、勉強したくなると思います。
将来の収入に、ほとんどつながらない受験勉強なら、
受験勉強に頑張る人は、激減ですよね。

希望通りに、幼稚園教諭の職に就いた生徒さんが、
数年後に、街で出会って、
「先生、幼稚園は退職して、今は、保母をしています。
保育園では、ピアノがないので、ピアノを弾かなくて
良いので、ピアノは、売りました」
と言われた時は、
「受験ピアノって、なんか空しいなあ」と思いました。

人の事は言えないです。
私だって、今の仕事で使わない事は、
ほとんど覚えていないです。
高校時代の微分積分も、大学時代の一般教養の
英語も、ほとんど忘れています。哀

昔、「ジャズピアノを習いたいです」という
お問い合わせがあり、その方は、子供の頃、
コンクールで、ピアノを演奏されたそうです。

私が、「どんな曲を、弾かれたのですか?」ときくと、
「忘れました。覚えていません」と言われたので、
「先生が決めた曲で、あまり好きな曲では
なかったのですね?」と質問すると、
「そうです。先生が決めた曲で、嫌いな曲でした」
と言われました。

私は、クラシックのコンクールの事は、よく分からないけど、
「嫌いな曲では、まず入賞しないだろう」と思いました。

でも、予想外に入賞して、先生や、親御さんに、
ほめられたら、嫌いな曲でも、好きになる??

私は、楽典の試験で、優をとった生徒さんが、
楽典の勉強は、好きにならなかったので、
入賞しても、好きになる確率は低いかも?と、思いました。

一つだけ思ったのは、ライブで、義理や義務で、
好きでもない曲を、演奏したり、本心は、好きでは
ないのに、「好きな曲だ」と嘘をついて、
演奏していると、次から、お客さんは、まず、
来ないという事です。

知人のライブで、そういう事例を、目のあたりに
しました。
私は、お客さんは、じょじょに減っていくと
思いましたが、そんなアマイものではなかったですね。
いきなり1人のお客さんも来なくなり、驚きました。

受験ピアノは、仕事の必要上、避けられないもので、
ドライに考えると、要領よく、合格すれば良いと
思ってしまうのです。

「好きだから、やりたいという気持ち、好き嫌いは、
脇において、とにかく、合理的に、合格しやすいように、
やっていくものだ」と、思います。

コンクールも、青柳いづみこさんの著書では、
「分かって欲しいけど、コンクールは戦略だ。
その音楽家が、特に好きではないけど、
戦略上、その音楽家の名前を冠したコンクールに、
挑戦する事はある」
と、いうような事を、書いていました。
(仕事上の戦略という事ですね)

鑑みれば、私は、膨大な時間をつかって、
学校で学んでいるのに、
「学校で学んだ事が、きっかけで、
一生学び続けたい事ができた」
という、経験がないのですね。

大学の国文学科の卒論で書いた「古今和歌集」も、
忘れてますね。

なんで、このテーマを選んだのですかね??
特に、好きではないけど、書きやすくて、優を
もらいやすかったからですかね?
先生に習った通説を、書いただけで、不勉強な
私は、自分の見解は、書けませんでした。

唯一、覚えているのは、森鴎外の「舞姫」で、
生徒と、先生の激論になり、私は、激しい討論を、
あっけにとられて、きいていただけでした。

私は、
「この人、なんで、こんなに森鴎外が好きなのだろう?
先生が知らない事まで、なんで知っているのだろう?」
と思いました。
だからといって、この人は、優をもらえたのですかね??
(試験勉強に関しては、ドライな私は、講師に反論して、
講師の心象を害して、悪い点を、つけられたら、
マズイと思ったのです)

まあでも、こんなに、あつく森鴎外を愛しているのだから、
趣味か?、お金をもらう仕事にしているか?の
その後は、分かりませんが、一生、文学を、勉強し続ける
確率は、高いと思われます。

コンクールで、審査員どうしが、激論になるとか、
生徒と審査員が、激論になるとか、そういう現場に、遭遇したら、
傍観者でも、一生覚えているだろうなあと、思いました。

明石家さんま氏の、めちゃくちゃ暴走した古典落語を、
きいた人は、その暴走ぶりを、
一生覚えているのかな?と、思いました。

試験の枠にはまりそこねた、暴走には、
物事の本質が、隠れているとも、思ったのです。

あさげピアノハウス

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