クラシックの現代音楽の新曲の再演は5%

小澤征爾さんと、武満徹氏の対談の本を読んでます。(1984年発行)

いくつか、興味をひかれた対談もありますが、
いつものように、私の悪い癖で、話があちこちに飛び、
長くなるので、今回は話を絞り、タイトルの1つの命題だけ書きますデス。

クラシックのコンサートで、演奏が多いのは、
バッハや、ベートーヴェンや、ショパンや、マーラー等の音楽が、
すぐ思い浮かぶ、バロック・古典派・ロマン派で、
近代音楽は、比較すると、演奏が少なくなりがちですよね。
(元の文は、「近代音楽でも、煩雑に演奏されているのは、
ドビュッシーや、ラフマニノフやラヴェルぐらい」
と書きましたが、クラシックの愛聴盤は、ほとんどないし、
クラシックのコンサートにも、めったにいかない、
クラシックは素人の、ジャズ大好きオバサンの
私の思い込みの文ですので、削除しました。
2019年9月6日)

近代音楽でも少ないのだから、現代音楽になると、
一番少ないし、再演も、少ないようです。

さりとて、バロックや古典派やロマン派の曲を作ると、
「過去の作品の模倣。単なる習作」と、
低評価になるという、作曲家には厳しい現実。

演奏家の場合も、ピアニストの中村紘子氏は、
著書の中で、
「演奏家のコンクールの場において、
いくら、近現代音楽で、素晴らしい演奏をしても、
バロックやロマン派が、上手く演奏できないと、
入賞できない」
というようなことを、語っています。

小説家は、新しい新作を書けば、
本になって売り出され、1回こっきりで終わる率は、
音楽に比べれば、格段に少ないし、新人の入り込む余地もあるけど、
クラシックの現代音楽は厳しいですね。哀。

上記の現実から、
「クラシックの現代音楽は、聴衆に必要とされているのか?」
という命題が、浮かびます。

小澤征爾さんの談では、
現代音楽の演奏に積極的な、ボストン・シンフォーニーが、
1981年に、創立百年を迎えるので、
今までの全レパートーリーを、調査したそうです。

調査によると、約3百曲の新曲が、
演奏され、再演は5%だそうです。

ボストン・シンフォニーは、世界的にも、
現代音楽に、一番理解があるオーケストラだそうで、
それでも、百年でたったの3百曲しか演奏してないし、
(1年で3曲)
再演はそのうちの5%しかない。哀。

あまりの厳しさですね。

武満氏は、この厳しい結果について、
「5%とは低率だね。しかし、バロックにしても、ロマン派にしても、
無数の駄作の中から、歴史に精選されて残ってきた作品だから」
というような事を、述べています。

小澤氏は、
「打率5%にしても、ボストンが紹介しなければ、
残らなかったのだから、(紹介は)やりがいのある仕事だ」
と語っています。

それでも、海外は、日本に比べると、
現代音楽の演奏に理解があるそうで
「武満徹 音楽創造への旅」という本で、武満氏は、
「日本の作曲家の賞では、最高レベルの
尾高賞を受賞しても、賞は出すけど、
コンサートで、演奏はしない。
日本のコンサートのプログラムに、
現代音楽が入る事は、ほとんどない。ひどい現状だ」
というような事を、語っています。

武満氏の作品も、日本より、海外で演奏される方が、
圧倒的に多いそうです。

クラシックは、いいかげんで、良く分からない私なので、
この命題を掘り下げる事は、できないですが、
ジャズの場合と比較してみます。

ジャズの場合、クラシックの現代音楽に相当するのは、
フリージャズですが、フリージャズになると、
「曲は、単なるアドリブの素材であり、聴衆は、
曲を聴くというより、その場の即興演奏を聴く」
という側面が、ますます強まるのですね。

曲も譜面に書いて、残しておかない曲もあるし、
その場の即興で、適当に作って、アドリブする場合もある。

クラシックのように、譜面通りに演奏するというしばりがないので、
フリージャズの場合、同じ曲でも、
毎回、まるで、違ってしまう。

その一期一会の変化が面白くて、お客さんが聴きにくるので、
再演率は、クラシックの現代音楽より、高率だと思います。

フリージャズ以外のジャズでは、
最近のオリジナル曲は、せいぜい、ラヴェルどまりなので、
オリジナルを演奏する率は、クラシックより多いです。

ライブでも、全曲オリジナルをやるジャズメンも、
よくいます。

ジャズの場合、大きなホールでやる事は少なく、
せいぜい、お客さんが20名もくれば良いので、
(10名でもOK)細々と、オリジナル曲主体のライブを、
続けられます。

CDも、予算をかけずに作成し、
初版で500枚売れれば、なんとか黒字になり、
再販できるので、全曲オリジナルのCDを、
出すジャズメンも多いです。

同じ曲でも、毎回違った即興演奏をするので、
ライブのたびに、CDを買うお客さんもいます。

話はタイトルとはそれますが、Jポップの場合も、
新曲を出しても売れないので、
過去のファンがついている人気曲のカバーが、
多くなったそうです。

新聞によると、「六本木心中」などの作詞で知られる
音楽評論家の湯川れい子さんは、
「何がヒットするかも、分からなくなっていて、
リスクのある投資をするよりも、
昭和のヒット曲の中から、売れそうな歌を見つけ出して、
カバー曲として出す方向にいく」
と、話しているそうです。

Jポップの場合、今は、新曲を百人に依頼して、
競作させるそうで、
こうなると、作曲は、プロの仕事としては衰退し、
アマチュアの趣味の人が、曲を作り、発表する方が、
盛んになる方向ですよね。

アマチュアのアレンジ能力も上がってくれば、
人の曲をカバーして、どんどん発表するアマチュアも、
増えてくると思います。

昔はプロのもの書きしか、世間に、発表できなかったのが、
今は、ブログで、誰でも、世間に発信できるようになり、
ブログをやるアマチュアが、どんどん増えたのと、
同じ現象だと、思います。

当然、あこがれの人の曲を演奏したいというニーズよりも、
「自分の曲を作って自演したい」というニーズが、
増えていると思います。

プロとアマの枠の境界が、なくなっているのですね。
音楽における枠の問題は、難しい問題なので、
しばらく考えて、後のブログで考察してみます。

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 さいたま市浦和区・町田けい子ピアノ教室
(ジャズピアノ・ポピュラーピアノ・クラシック・作曲・編曲)

あさげピアノハウス

追記(2019年9月6日)
ジャズバンドの元バンドメンバーに、
バルトークが好きな人がいて、
私も、バルトークの好きな曲を、イントロに使用し、
ジャズのスタンダードにつなげて、アレンジしたものを、
バンドでやりました。
みんな楽しそうにやってました。

ただ、ライブでは、この路線は、ウケが悪いです。
こういう路線を好きなのは、プロとか、
アマチュアでも、プロに近いレベルの人達で、
一般的なジャズが好きな多数派の層には、
うけないです。

アレンジに応えられるだけの、
ピアノの技量がないという、
個人的な私の技量の問題もあると思いますが、
大衆うけするジャズと、
プロやツウにうけるジャズがある。

そういう意味では、クラシックの近現代も、
大衆うけはしないけど、プロやツウには、
受ける要素はあると思うのです。

ただし、一部の少数派のプロやツウにうけても、
利益は出ないので、ビジネスとしては、
あがったりなのですよね。

小さなライブハウスで、演奏できるジャズ
の場合は、まだ再演しやすいですが、
多人数のオーケストラとなると、多額のお金が
かかり、(ネットの情報では、数百万との事)
お金の問題で、難しいのだと思います。

今後、音楽教育の成果で、近現代音楽にも、
興味を持つ層が多くなるのか?
それとも、多くならないのか?は、
私には、予測不可能ですが、
この問題は難しい問題ですね。

私の狭い経験では、子供の頃から、
日常的に、家で近現代を聴いていると、
自然に、近現代が好きになるようです。

私の息子は、ジャズの難解なフリーも好きだし、
近現代音楽も、わりと、退屈せず、聴く子です。

ただし、そういうタイプは、少数派で、
息子の長い学校生活のなかで、
同窓生で、そういうタイプは、一人もいなかった
ようです。
そんなわけで、息子は、学校では、好きな音楽の
話題は避けていたようです。

ピアノ教室で教えていても、幼児向けに
作曲すると、難解なクラスターの曲でも、
面白がるので、幼児から、近現代音楽の
要素も、経験した方が良いとは思うのです。

昔、他教室との合同発表会で、小学生の
生徒さんの一人が、私が編曲した、
クラスターを多用した無調の曲を、
演奏しました。20名ほどの参加者の
なかで、一番うけが良く、盛大な拍手を
もらいました。
私には、予想外のウケでしたが、
子供達は、意外に、無調も好きだと思いました。

現実に、幼児でも、教えていないのに、
無調の曲を作曲する子は、たまにいますデス。
ただし、幼児は、ハーモニーは、難しくて、
作れないので、メロディーだけを、
作ってくるのみで、ハーモニーは、
私がつけます。余談ですが、こういう
タイプの幼児は、親御さんが、家で
無調音楽を好んで聴いている人が、
多いですね。家で普段聴いている音楽
は、調性音楽であろうが、無調であろうが、
幼児には、等価のものなのですね。

こういうタイプは、無調音楽のメロディーと、
調性音楽のメロディーと、交互に、作曲したり
します。

しかし、ソバ屋や、街中で、コルトレーンが
BGMで流れるようになったとはいうものの、
クラシックの近現代の曲が、街中のBGMで、
流れる事は、めったにないのですね。
そういう意味では、今後も、近現代音楽が、
好きな聴衆は、あまり増えないのですかね??

話が長くなりますが、元ジャズバンドの
メンバーの一人は、ニューエージ、Jポップ・ジャズライブ
で活動し、音楽専業で、食べていっている人です。
この人は、Jポップで、無調の曲のCDをリリースし、
そこそこ売れてるようですね。

私は、「Jポップで、無調の曲は売れないから、
無調の曲のCDが出ることはない」と、思いこんで
いたので、予想外の事です。

今後、Jポップでも、無調の曲も売れる時代が
くるのか?こないのか?
先の予想は、難しいです。

あさげピアノハウス

この記事へのコメント

いちクラシックふぁん
2019年09月04日 12:15
初めまして。
>近代音楽でも、煩雑に再演されているのは、ドビュシーや、ラフマニノフや、ラヴェルくらいですかね。

ラヴェル以降でも、
ストラヴィンスキー、バルトーク、プロコフィエフ、ショスタコーヴィチなどがいます。
小澤さんの重要なレパートリーがいくつもありますよ。
あさげ
2019年09月05日 11:10
私は、クラシックは不勉強で、小澤征爾さんの名演は、
聴いた事がないので、聴いてみます。
私の知らない情報を、ありがとうございます。
私の場合、どうしても、ジャズをやると、即興演奏
に興味がいって、即興演奏の要素が少ないクラシックは、
何回も聴く愛聴盤が少ないですね。
何回も聴くより、気になった所があると、
つい、譜面やスコアを買って、コードネーム
に直し、アドリブをとる練習に使ってしまう。
クラシックには向いていないタイプですね。
バルトークは、ジャズバンドの元メンバーが、
大好きで、愛聴盤も多いようですね。
私も、譜面をいろいろ買い、バルトークの曲を、
イントロに使って、ジャズのスタンダードに、
ドッキングさせて、編曲した事はあります。
こういうアレンジは、バンドメンバーも、
喜んでやりますが、バルトークの曲は、
コードネームに直せない部分や、アドリブをとれない
事が多くありますね。(笑)
でも、とれない音楽も新鮮で、好きです。
ジャズの名曲の「ネフェルティティ」も好きで、
アドリブとれないのが、良いと思います。
ストラヴィンスキー大好きな、知人の
ジャズメンもいて、その人は、変拍子に、
凝りまくり、いろいろなコードを重ねる
ハーモニーが大好きです。
私も、スコアを買って、勉強しようと思いながら、
いまいち、私の能力では難解で、
やる気が出ず、ほったらかしですが、
ジャズのチャーリー・パーカーが
ストラヴィンスキーのスコアを、持ち歩き、
研究していたのは、有名な話です。
プロコフィエフや、ショスタコーヴィチは、
数曲聴いたけど、能力のない私には、ピンとこず、
スコアは1曲も買ってないです。
私はこの程度だけど、周りのジャズメンは、
私より、熱心に近代のクラシックを、
勉強してますね。ジャズが本業だけど、
クラシックのオーケストラで、
近代曲を、演奏していた知人もいます。
今は、ジャズメンでも、クラシックの近代を、
勉強するのは、当り前ですが、ただ、
せいぜい、近代までで、現代を勉強している
人は、私の周りでは、いないです。
(あくまでも、狭い私の周りの人だけの
話で、勉強している人は、いると思いますが・・)
元バンドメンバーの一人は、Jポップと、
ニューエージの高名プロと、活動し、
海外ツアーをやってますが、
クラシックの近代が好きなタイプのようで、
Jポップなのに、無調の近代のハーモニーをいれて、
CDを出しました。
長々と書きましたが、結論は、近現代は、
ジャズのプロには興味があるけど、一般大衆には、
うけないのですね。哀
クラシックも、一般大衆うけするものと、
プロやツウの聴衆にうけるものが、ありますよね。
多数派の一般大衆にうけないと、儲けが少なく、
再演もなくなりがちは、シビアな現実なのですよね。

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